「Perfume LIVE 2021 [polygon wave]」感想

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 Perfumeが、2021年8月14日,15日の二日間、「Perfume LIVE 2021 [polygon wave]」を、横浜・ぴあアリーナMMで開催しました。わたしは、居住地と同じ県内の映画館で行われたライブ・ビューイングを鑑賞しました。

 このブログの更新頻度は非常に低いのですが、今回はあまりにクソデカ感情を抱いてしまい、ご時世も相まってこの感情を放出する場所がないので、ここに書こうと思います。

 ※ 以下、ネタバレが多く含まれております。閲覧にはお気をつけください。

 

 

全体的な感想

 今回は、セットリストから演出、舞台装置に至るまで、本当に驚きと感動の連続でした。いきなりの「掟」破りからはじまり…云々、というところですが、これはセットリストを振り返りながら述べていきたいと思います。

 公演終了後にTwitterで公演の感想を眺めていたので、言葉の一部が拾ってきたものになっているかもしれませんが、意図的なものではございませんので、お許しいただければと思います。

 

曲ごと?の感想

OP.「システムリブート」 / および 転換等の演出

 いきなり曲の感想ではないんですが。今回、全体を通して、転換の際などに、「わたし(=Perfume)」と「みんな(=ファンや観に来た人?)」との関係や、その「存在」を問うたり、これが「」だとしたりする(?)ようなモノローグが多々見られました。細かいことは覚えていませんが、ELEVENPLAY(?,バックダンサー)の方々が、足元のLEDに写り込んでくる手の影に掴まれるなど、結構ダークな演出が多かったなと思います。

 コロナ禍に遭い、ライブの中止等を幾度も余儀なくされ、挙句の果てに東京オリンピックの開会式への出演までもなくなってしまった(とされている)Perfume、そしてMIKIKO先生を含むTeam Perfumeの、葛藤の結果ではないでしょうか。近年のライブでこのような演出はなかったと思うので、なかなか珍しいものを見たなと思いますし、そういった意味で、Perfumeのいわば人性を見せたこの演出は、「いいもの見せてもらったな」という気持ちです。語弊がありそうだけど。

01. 不自然なガール

 そしていきなりの掟破り、『不自然なガール』。この曲は、Perfumeミュージック・ビデオに初めてバックダンサーを出演させたことで(ファンの中では)有名です。ライブでは他の曲と同じようにPerfume三人だけで演じてきましたが、今回はバックダンサーを起用し、そのミュージック・ビデオの再現ときました。

 「どんなに大きなステージでも三人で見せきる」という「」を真っ先に破ってきたことだけですらかなりの驚きだったのに、バックダンサーを交えたミュージック・ビデオの撮影が相当に大変だった(らしい)『不自然なガール』を、一発本番のライブによく持ってきたな、と思いました。それだけみなさんのスキルや度胸が増した、ということなのでしょうか。

02. Pick Me Up / 03. 再生

 続いては「Pick Me Up」と「再生」。正直このあたりは近年のライブでもよく演られているものなので、『不自然なガール』に比べると大きな驚きはありませんでした。「polygon wave」というテーマの中において、こういった「Perfumeっぽい」曲は必要だったとは思いますが。なんせ1曲めの驚きがすごかったので、記憶に残せなかっただけかもしれません。

 そしてMC。三人の言葉がすべて、コロナ禍を生きるわたしたち、そして三人自身にも響いていたんじゃないかと思います。あ~ちゃんの「誰にも邪魔されないフィールドで(ライブできます)!」みたいな発言、聞いた当時は「まぁ~やっとワンマンで有観客出来てることを指してるのかな」と思いましたが、あとからTwitterを見て「あ~オリンピックに出られなかった(=コロナ禍や電通に邪魔された)ことを指してるのか」と思いました。そらそうよな。この日のMCは、普段のPerfumeに比べて、直接的で、力強い言葉が並んでいたように思います。

 のっちやかしゆかライブ・ビューイング勢へのアツい呼びかけも本当にありがたかったです。三人がライビュ勢を煽ってくれればくれるほど、会場の拍手もどんどん大きくなっていきました。物理的には何も聞こえていないはずだとわかっているのに、三人が「聴こえている」と言えば、わたしたちもそれを信じて、遠く離れた場所から精一杯の応援=拍手を送ることができるPerfumeとファンの間にはそういう関係性があるし、三人の言葉にはそれだけの力があるのだと実感しました。

04. Future Pop / 05. TOKYO GIRL

 そしてあ~ちゃんの「楽しんでいきましょう~!」からの『Future Pop』。今回のライブに向かうにあたって「『ポリゴンウェイヴ』や『Time Warp』は、近年の曲とも雰囲気が違うから、セットリストにはほかにどの曲をモチーフとして入れてくるのだろう」と考えていましたが、『Future Pop』を聴いたとき、「なるほど『Future Pop(アルバム)』と結びつけていくのね」と思いました。まぁ一番新しいオリジナル・アルバムではあるから、自然なことかな、という。実際、そこから同アルバムの収録曲である『TOKYO GIRL』にシームレスに繋がっていきました。

 『TOKYO GIRL』の背景の映像は、『FUTURE POP』ツアーや『P Cubed』ツアーと変わらず、ずっと東京の風景(もちろんマイナーチェンジは多々あれど)ですが、今回は、ライブ・ビューイング(=カメラの視点)もあるし、LEDが後ろにも足元にも一面広がっているということで、近年ときどき披露される「ダイナミックVR」の流れを汲んだものに近いなと思いました。いつぞやのMステでやった『Spending all my time』や、紅白の『FLASH』が近いかな。

06. I still love U / 07. マカロニ

 そして『不自然なガール』に次ぐレトロ曲枠はまさかの『I still love U』、そして『マカロニ』。ひっくり返った。開いた口が塞がらなかった。特に前者。でも確かに『I still love U』の曲調というか、地味に内在するバキバキ感は、今回のライブのセットリストにも合っているかも、と思いました。あと、マカロニ含めだけど、恋人やそれ未満のような切ない関係を描いている両者の歌詞を、現状のPerfumeとファンの関係に置き換えたりもしたのかな、とも邪推。いやガチ恋勢みたいなこと言うじゃん。違うけど。

 でもそれだけ、こういう曲の使い方、演出の仕方は珍しかったと思います。これまでも『微かなカオリ』とか『575』とか、ラブソングっぽい曲を歌うことはあったけど、それはライブの中において、はいファンと交流する時間ですよ~そのためにちょっとした柔らかめの曲使いますね~みたいな使い方をされていたと思うので(全くディスってはない)。

 『I still love U』に関しては、これまたダンサーの皆さんとのパフォーマンスでした。でも、この曲含め、これ以降のダンサーの皆さんの動きは、「ダンサー」ではなく「演出の一部」という感じ。『不自然なガール』以外にもダンサー起用するのか、と思い、はじめは少し複雑な気持ちでしたが、「あ、もはや”有機的なオブジェクト”なのか」と思ったときに、少し腑に落ちた感じがしました。だからこそ、メインでカメラに映す必要はなかったと思いますが…ところどころそういうカメラワークあったので。

 『マカロニ』は、『Reframe』さながらの影の演出で、もちろんどこからも光を当てていない、LEDで事前収録のものを映している可能性もはじめから考えましたが、にしては三人の位置が足元の影とピッタリ合いすぎだなと思い、動くライトを探すものの、結局そんなものはなく、改めてPerfumeの「バミリ合わせ力」を知りました。

08. ポリゴンウェイヴ

 そして転換。OP.(最初の見出し)でも述べたように、モノローグや、影に掴まれるダンサーの演出。ナタリーさんの記事によると、

「あなたの気配は、私の気配は、みんなの気配は、私を私にしてくれる。でも、それは届かない」

 「私が私になっていく。今、それを届ける」

 と言っていたらしいです。これまで「私たちにできること」、とか、ポジティブな言葉を述べてきたPerfumeのことを考えると、これはだいぶ珍しいです。ここでいう「あなた」というのは、ファン一人一人のことかもしれないし、隣に立つメンバーのことかもしれない。その後に「みんな」にも言及していることを踏まえると、おそらくメンバーのことを言っているのだと思うけど。いろいろな解釈や捉えようがある、それをわかった上での言葉選びだと思いました。恋人のことかもしれないs

 そしてそのリズムのまま突入した『ポリゴンウェイヴ』。まぁ最近テレビでもやっていましたし、何回も見返していたので、振り付けや衣装には特に驚きはない…とか思っていたら、やばい演出だらけでしたね。さすが今回のライブのリード・トラック。

 床に映ったグリッドの上を、動くグリッドに合わせて動く多面体の数々。てっきりコンピュータ制御だと思っていたら、いるんですね。中に。人が。マジかよって思った。グリッドの動き、別に人間の動きに対して気遣ってないんですよ。機械的なんです。なめらかにはじまって、なめらかに終わる。PowerPointの「軌跡」の移動とか、AviUtlの「加減速移動」にも似ている。でもその動きを、ヒトが、物体を押すことでも、成立させられるのか、という、ヒトを超えたヒトたちの動きを見た気がしました。

 なんていうことに驚いていたら、曲はあっという間に終盤へ。あぁやっぱり3分って短いなぁなんて思っていたら、

 終わらない。曲が終わらない。なんか知らねぇ雰囲気の間奏来た。あまりに曲調が違いすぎて(ってほどではないけど)、最初「あ~メドレー形式でそのまま次の曲、なんなら新曲かな?行くんだ、畳み掛けるな~」なんて思っていたんですが、違うんですよ。間奏のあとにまた「人工の太陽が~」ってポリゴンウェイヴの歌詞繰り返すんですよ。んで何事もなかったかのようにラスサビの後半繰り返して。終わって。

 あのRemix、今度のEPに収録されるものとちゃんと同じなんでしょうね!?ヤスタカ神。

09. 無限未来

 ここで『無限未来』。リリース以降、ライブの終盤に、「私たちの未来は明るい」という言葉とともに歌われてきたこの楽曲が、ライブの中盤に来ました。歌詞や雰囲気、曲名よりも、「曲」にフォーカスを当てた結果のこの順番、な気がしました。

 演出は、前日のNHK「ライブ・エール」で披露していたものと同一。いやね、おかしいとおもったんですよ、テレビで披露したときに、TVサイズじゃなかったから。いくら番組全体の尺に対して出演アーティスト数が少ない(※気がする)からって、フルサイズでやるのかいと。そう考えたときに「あ、ライブから引っ張ってきたな(=明日見ることになるな)」という確信はありました。そりゃテレビでやっちゃった曲最後には持ってこれないもんな。

 個人的には、「時間を止めて」で後ろの三人の影が止まる演出がハッとさせられるような気持ちでした(なんで?)。映像が不具合で止まってしまったのではないかと思わせられる、ニクい演出だったなと思います。

10.  GLITTER

 そして『GLITTER』。例のいつものライブバージョン(前半シングル版、2番からAlbum-mix)に加えて、もう一度シングル版のラスサビを踊る、というロング仕様。サブステージへの移動という目的もあったと思いますが、レアなサイズが見られたなと思いました。

 あと、このライブで『GLITTER』をやったことの意味。もともと、東日本大震災と少しだけ結びつけるようにパフォーマンスされていた印象のあるこの楽曲ですが、

キラキラの夢の中で

僕たちは約束をしたね

その日がいつかくるまで

泣かないよ 思い出すよキミを

祈って キミと 笑って

という歌詞は、現状にも当てはまるだろうと大いに納得し、前曲の無限未来と合わせて、明確なメッセージ(ざっくり言うと「また会える日まで!」的な感じだと思うけど)を伝えてきたかなと思います。感動しちゃった。

 ここで「P.T.A.のコーナー」。『Perfume』や『Puppy love』、『MY COLOR』や『ねぇ』(ねぇに至ってはキメ顔演出付き)で、フラグもバンバンに立てて踊ったのにPerfume演らなかったのはいかがなもんなんでしょうk。MY COLORは演ったね。

 今回のハイライトは「浮き輪」。最後まであれがなんの動作なのかわからなかったけど、三人もみんなも楽しそうだからいいや。そういうコーナーだし、それを許容してしまう心をもてる空間です。あそこは。

11. FAKE IT

 そして『FAKE IT』。「あ、ここからはいつものアガっていくパターンだな」と、半ば「いつもどおり感」を感じたのと同時に、「あ、今日はParty Makerやらないかな」とも同時に感じた。Party Makerをやる舞台装置・セットではない気が、なんとなくしました。

 でもやっぱりFAKE ITは偉大。みんな(わたしも)だんだん身体が抑えきれなくなって身体揺らしはじめたし(隣の方々、迷惑だったらごめんなさい)、ライブ・ビューイング会場の手拍子も最高潮だった。

12. ポリリズム

 ここでまさかのポリリズム。いや、『[polygon wave]』だし、そりゃやるでしょと思っていましたが、FAKE ITのあと、ラストではない位置に持ってきたのは意外でした。え?意外?うん、意外。床の映像、三人を中心に何度も広がっていく青い四角が、なんでもない演出といえば演出だけど、なんだか印象に残っています。

 全体を通して『エレクトロ・ワールド』がなく、『P Cubed』ツアーと合わせてセトリ入りを逃したのは残念だけど、次ポリリズム復権してくれるならいいかなって思います(人質?)。

13. Time Warp

 そして『Time Warp』。有観客ライブでは今回が初披露。リリースから一年近く経っての初有観客。いや、やばいですね、フェスもなくなってしまうというのはこういうことを指すんですね。年末とか夏のはじまりとか、例年なら披露するチャンスはいくらでもあったろうに。

 これもMVを再現する感じの映像と周囲のダンサーさんたちの動き。でしたが、いやバックダンサーそんなに長く映さなくてもいいよ、というカメラワークも、ときどきあったかなとは思います。ダンサーに隠れて三人が見えなくなってしまう、とかもあり、現地参戦組との視点の違いを感じました。あくまで現地では、曲中ずっとPerfumeが主役で、ダンサーさんたちはその周りにいたのだから、ライブ・ビューイングでもその視点は再現してほしかったな、と思いました。

14. Miracle Worker

 「ドゥーーーーーーーーーン、ドゥドゥドゥ」でおなじみ(?)『Miracle Worker』。今回の最大のサプライズ人事じゃないでしょうか。リード・トラックがベストに入らなかった悲劇のアルバムCOSMIC EXPLORERからまさかの選抜。Cosmic Explorer、泣かないで…。

 というのはさておき、普通にアガれるし、楽しいし、のっちの「起こせミラコゥ(→ウインク☆)」が見られるのはこの曲しかないのです。

 そして最後のMC。話は聞いてるんですが、どうも高揚してたのか、いっつも内容は抜け落ちちゃうんですよね…記事を読んでて、あ~ちゃんの「ポテチ食ってる日もありました。ごめんなさい。」だけ思い出しました。面白かったな…。むしろこれまでそれだけの日がなかったのかと思いました。プロ意識ってすごいわ、ほんとに…。

15. MY COLOR

 最後(≠ 最後)は『MY COLOR』。あ~ちゃん、いつもわかりやすく前フリしてくれるけど、少なくとも現地にいた人はなんなら「せーの」だけでわかってくれる人が大多数だと思います。まそれはともかく。

 みんなで楽しく踊って、あ、中盤までやってたポリゴンウェイヴ絡みの演出はあれで終わりだったのかな?と、曲が終わるに近づいて感じていた自分もいたと思います。でも、それで終わらせるPerfume、いや、MIKIKO先生じゃないですよね~、やっぱり…すごいのブチ込んできた。

16. 新曲(未発表)

 MY COLORが終わって、その流れのまま突然暗転を感じて、え、終わり?あ、珍しくアンコール案件?なんて思っていたんですが、いや、突如始まりましたよ。なんか。一回しか聴いてないから、曲調とかはっきり覚えてないけど、「ステージに立つの」とか、鏡だのミラーボール絡みの歌詞だのを聴いて、こう思ったことだけははっきりと覚えています。

 あ、Perfumeってまだアイドルもできるんだ…。

 驚きを通り越してもはや感動すら覚えました。30代でアイドルやってるの、AKBのゆきりんしか知りません。それだけ希少というか、日本においてこの年代でアイドル然をやるのって難しいと思うのです。

 でもPerfumeはやりました。最近わたしの中で結論が出つつあった「Perfumeはアーティストかアイドルか」問題を、また混迷に陥れました。

 だって素敵だったんだもの。キラキラの衣装を着て、ファンとの関係をあんな歌詞で歌ってくれる。そして終わったあとに「これは夢だ」と言い残して、スクリーンに映る「See you at the next stage.」とともに向こう側へ消えていったのです。Perfumeはたしかにあの日「」でした。

 いつもならMY COLORだのなんだので締めて「じゃあね~!またね~!」という、寂しいながらも確実な安心感を残してステージを後にしていた三人の背中を、あれだけ(当社比)不安な気持ちで見つめたことはありません。

 そのあとTwitterで「ありがとうございました~!」ってやってたから、あぁそういう演出だったのね、と思うけど、少なくともあの場でそう思わせた演技力、演出力、実力。Perfumeは最高のエンターテイナーだとあらためて強く感じたのです。

 

  長くなりましたが、以上が「Perfume LIVE 2021 [polygon wave]」ライブ・ビューイング勢のイチ感想です。

  ここ最近、自身の引き出しの少なさ、生み出すもののバリエーションのなさに肩を落とす日々が続いていたのですが、20年活動してもなお新しいライブの形や演出を見せてくれるPerfumeさんやTeam Perfumeの姿を見て、自分もまだやれるのだと、強く背中を押してもらえた気がしました。

 ありがとう、Team Perfume。次のパフォーマンスも心から楽しみにしています。